(ワイリス)
スペイン・バルセローナを拠点に、世界(欧米、アフリカ、アジア、オセアニア)各地の教育機関ないしはコミュニティに数学ITC教育システムを供給するプラットフォーマーです。早くからMoodle をはじめとする学習管理システム(LMS)と密接な関係を築き、それらの数学教育の支援ならびに内容の充実に貢献するとともに、LMS
における高度な数式作成編集のJavaScript
ツールWIRIS Editor の開発を手がけてきました。また学術論文の標準フォーマットとしての金字塔を打ち立てた数式作成編集ツールMathType
の開発元であり、またXML をベースにしたWeb 用数学言語MathML の開発と普及に寄与した米国Design
Science 社から遺産を引き継ぎ、さらに計算や座標の表示が可能なCalcMe、LMS での数学問題の作成・採点システムWIRIS Quizzes などの新たな製品を生み出し続けています。
Design Science (WIRIS America)
同社は1986
年にカリフォルニア州ロングビーチに設立され、科学技術コミュニケーションのためのソフトウェアの開発、印刷物およびオンライン文書上の数学表記のオーサリングと出版、さらにはインタラクティブな数学のコンテンツを含むWeb
ページの構築に役立つ新技術の研究開発に積極的に取り組んできました。中でもMathType は国内外の科学者、エンジニア、教育者、編集者の間で広く愛用されてきましたが、その簡易版でありMicrosoft
Office の標準数式作成ツールとして以前採用されていた数式エディタ(Microsoft
数式3.0)をはじめとする数多くのOEM
パートナーの製品上で数学表記技術をライセンス供与してきた功績も高く評価されています。さらには数学のマークアップ言語MathML の技術においても多大な貢献を行ってきました。
MathMLの開発
MathML(Mathematical Markup Language)は、コンピュータ用マークアップ言語XML(Extensible Markup Language)をベースにした数学記述の標準規格です。MathML 仕様書の編集者であるロバート・マイナー博士が同社の研究開発担当副社長、またW3C のMath
ワーキンググループの長年のメンバーであり、そして数学アクセシビリティのためのMathML
応用の第一人者であるニール・ソイファー博士が同社の上級研究員を務めるなど、同社は当初よりMathML
の開発と密接に関わってきました。
もともとMathML はWeb ページ上に数式を組み込む手段として開発されましたが、広範囲の様々な数学と科学のアプリケーションにおける数学の交流とコミュニケーションのための一般的なフォーマットにまで成長しました。1994年、ワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアム (W3C) が設立され、Web の規格を推奨するためのプロセスを開始したのと、ほぼ同時にW3C でHTML に数学表記への対応機能を追加する提案がなされ、1995 年にMathML の正式な開発が始まりました。そして1997 年にMathML の仕様書の最初のリリースが行われました。Web ブラウザでの実装に関しては、他に先駆け同社がInternet Explorer にMathML 対応の機能を追加するMathPlayer を開発しました。またネイティブのMathML サポートが、Firefox、Opera および様々な専門的ブラウザに追加されました。ブラウザ以外にも、MathML はXML に基づく出版過程(パブリッシング・ワークフロー)に広く採用されており、そしてCellML と同様に科学分野のXML ベースの標準の記述法のひとつに挙げられています。また、Microsoft Word、Open Office、Maple、Mathematica のような著名なアプリケーションを含む数学的内容をサポートするアプリケーションのための交換フォーマットとしても使用されるようになりました。さらには視覚障害者にアクセシブルな数学を提供する手段としてのMathML の卓越性も認められるようになりました。
視覚障害者に向けた数学アクセシビリティへの取り組み
同社は全米のコンピュータユーザーの実に20 %近くをも占めるとされる軽度の視覚困難または障害をもつ人々、さらに重度の障害をもつ人々にも、数学に手軽に接することができるよう、とりわけWeb や電子書籍の世界における数学のアクセシビリティを向上させる取り組みを行ってきました。数学のアクセシビリティの分野における様々な活動に参加し、その研究開発活動は全米科学財団の資金によってサポートされてきました。
Design ScienceとWIRISとの統合
2018年4月提携先のスペイン・バルセローナのWIRIS
社(商号:Maths For More S.L.)との完全統合により同社の米国拠点として組織変更しました。社名のWIRIS(ワイリス)はセバスチャン・ザンボ教授が提唱する「大規模教育コミュニティにおける数学教育のためのネットシステム」に由来し、すなわちネット接続可能な世界のどこででも高等教育の遠隔授業が受けられる環境を指します。カタルーニャ工科大学発のベンチャーとして起業し、現在は欧米はもとよりアフリカ諸国やインド、そして中国などの東アジア諸国といった世界各地で高等数学ITC
教育に携わっています。とりわけ旧社が開発に心血を注いだMathML
への類のない深い造詣を活かし、大学や大学院などで扱う様々な分野の複雑な数式の表示、さらには計算(評価)までも卒なくこなすシステムの構築など、遠隔授業の質の向上に大いに役立てています。